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入社前研修で社会に寄与できる〈覚醒した戦力〉を選別する

福岡2001篇

平成13年4月号「こころの経営ゼミナール」

 中小零細企業の人材とは、言い換えれば〈覚醒した戦力〉にほかならない。覚醒した戦力をどれだけ確保できるかは、中小企業にとっては死活問題であり、入社前研修を軽んじる会社はその企業の永続性を獲得することが極めて困難になるであろう。

内定者をふるいにかける入社前の「三つの課題」

 ここでいう“覚醒”とは、会社の基本的な経営方針あるいは経営者の考えを心底理解して仕事の本質を見極め、社会的役割を見出し遂行できる状態をいう。この人材を確保するための、当学院における「入社前研修」について述べたい。

 研修の対象になるのは、まだ学生である新卒の内定者に限ってであるが、私は4月入社前に次の三つのことを学生に課している。これは、内定者を更に選別する“ふるい”のようなものだ。

「卒業式・祝賀会・謝恩会」の裏方として参加する

 まず一つ目は、「卒業式・祝賀会・謝恩会」に主催者の一員として参加することである。会を成功させるための業務の一端を担うことで、当学院のお客様である合格者を一緒にお祝いするわけだ。狙いは二つある。一つは、自己犠牲、奉仕の精神を社会に巣立つ前に再認識させることである。屋上屋を重ねるようであるが、案外、こんな基本的なことが身についていない。もう一つの狙いは、当学院の仕事の性質を理解させることだ。

 当学院の仕事、商品は目に見えない付加価値が大きなウエートを占めるので、仕事の全体像の説明は非常に難しい。当学院の仕事、商品は、受講生であるお客様との信頼関係なしには成り立たないが、このことを当学院で学び、ひとつの大成を遂げ、感謝の念をいだく卒業生の姿を見せることで、内定者に当学院の目的を認識してもらいたいのである。

「建国記念式典」に裏方として参加する

 二つ目は、毎年2月に日本会議福岡が行っている「建国記念式典」の受付業務をしてもらう。これは当学院の定例行事であり、毎年1,000人以上の志を持った人たちが集う行事だ。今年は福岡国際会議場で厳かに行われ、我が国の建国を称え祝った。来賓には、公務を押して参加していただいた有力議員、各業界・団体の有力者も多数参加される。この志をもった方々と接することで、内定者は“国家や国史”とのかかわりを身をもって知ることになる。

 あえて建国記念式典を選んだのは、国があって成り立つ社会の中で働く日本国民としての自覚を明確にできるからである。初心に帰るために、皆が決起する公的行事でもあり、1年に一度、改めて我が国の建国の日を心に記す式典だ。そこで初心にかえるということは、道を誤らないことにつながると信じている。かつて誓った志を儀式化、行事化することによって、公的に大義名分が立つのだ。

二つの課題で仕事の内容と社会的な役割を知る

 社会で仕事を成功させるには、なにより一体感が必要である。顧客や組織の仲間としての一体感、そして日本という国家に属し、はたまた先人の歴史との一体感を持ってもらう。

 当学院は、天神のオフィスビルの最上階にあるが、内定者たちは、見晴らしのよいオフィスで格好良くデスクワークする姿を将来の自分に重ねているはずだ。しかし現実はそう甘くない。仕事には自己犠牲、奉仕の精神、一体感といったものが必要不可欠である。今の若い世代は、このような考えを苦痛に思うであろうが、こちらとしても格好良さだけで入社されては困る。お互いに不幸にならないためにも、入社前研修は重要だ。

 だいたい、一つ目の「卒業式・祝賀会・謝恩会」と、二つ目の「建国記念式典」に主催者の一員として関われば、賢い内定者ならば当学院の業務は、お客様に喜んでいただくサービス業であり、学院の社会的な役割は、国家や民族と一体不可分であるということは自ずと理解できるはずである。

「教育勅語」を暗記し忠孝を心に染み込ませる

 最後の三つ目は、在学中に〈教育勅語〉を暗記させることである。昭和20年まではわが国の学校教育は、社会に出る前に国民教育や公民教育をしてくれていた。少なくとも道徳的厳しさはあった。今のやれ自由放任だの、人権だのと学生を過保護にする学校教育よりは素晴らしいものがあった。社会の厳しい現実をオブラートで包み込んでしまっている今の制度だと、実際の戦場(ビジネス社会)では役に立たず、会社が再教育しなければならない。

 〈教育勅語〉は、忠孝の教えを端的に言い表しており、暗記させることにより、再教育の効果がある。当学院の仕事、商品は説得の結果、納得の上で学費を前納していただかなければならず、お客様と当学院、ひいては担当者との信頼関係が決定打である。だから売り手である担当者が、心を偽り隠していては信頼関係は生まれてこない。心底からお客様の資格取得を願い、自己犠牲をいとわず、奉仕の精神で最後まで責任がとれる人でなければ当学院の仕事は勤まらない。まさに〈教育勅語〉の精神を体現できる“人財”でなければならないのだ。

 かくして、「卒業式・祝賀会・謝恩会」、「建国記念式典」、「教育勅語」という三つの課題を担わせることにより、入社前から〈覚醒した戦力〉として第一線で活躍できる“人財”が確保できるのである。