【業績悪化と解雇は矛盾する】有言実行 | 九州不動産専門学院グループ


 

業績悪化と解雇は矛盾する

福岡2001篇
平成12年11月号「こころの経営ゼミナール」
業績悪化と解雇は矛盾する
 近頃、といってもここ十数年の傾向であるが「業績悪化」を理由に「リストラ」と称して長い間勤め上げてくれた社員を解雇する企業(経営者)が後を絶たない。

リストラという危機の先送り
 大分前になるが、ゼネコン準大手の熊谷組が社員3人につき1人の割合で解雇したことがある。しかし、特定の人々の給与水準を維持するために他の人々の首を切り、その場しのぎ的な対処療法をしたところで、いずれ同様の危機が巡ってくる。職場では「次は誰か」と囁かれ、忠誠心など何処吹く風、面従腹背と「事なかれ主義」の横行する殺伐とした風土がかくしてできあがる。あとは推して知るべし。転落の一途だ。違いは経営破綻が社会的に露呈する時期が早いか遅いかだけである。以前の例でいえば、巨大デパートそごうをはじめ、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行、日本債権信用銀行、そして最近では日本航空その他あまたの大手倒産企業にしても、かつて「リストラという人員整理」で危機を「先送りした」経歴を持つところばかりだ。そして、当時の経営者はその処置がいかにその場しのぎ的な療法であったかを今ほど実感している時はないであろう。
 一例を挙げよう。10人乗りのカッターが浸水してこのままでは沈みそうになる。「お前たちが乗船していたのでは沈んでしまう。だから3人に1人は船から海に飛び込んでくれ!」。これが現下の大手企業の「常識的で一般的な切り抜け方」であった。かくして、海には数え切れないほどの溺死者が浮游し腐乱することになる。たとえ「今日はある企業」でもこれでは死者の怨念がその存在を許すはずはあるまい。

不景気だからこそ人員採用
 当社(九州不動産専門学院)の職場では逆だ。不景気になればなるほど採用人員を増やしていく。浸水してくる水をかき出す人、浸水個所を探し出す人、発見したその個所を修復する人など、浸水前よりはるかに多くの人が必要になってくるからだ。それに、順風満帆で航海していた時と違って、失敗すれば一蓮托生、全員が海の藻屑なので、乗組員の精神的集中度も格段に違ってくる。個人のおかげではなく、全員の意思統一と協力の賜物として危機を脱することができたという共通の体験を味わうことができるのだ。

業績悪化には非借入と給与減額で対応せよ
 さらに具体的に説明しよう。業績悪化には第一に「非借入」で対応することである。これは口でいうほど生易しいことではない。まず、経営者は報酬を取ってはいけない。当たり前といってしまえば当たり前だが、これが意外と守られていない。ここで「仕事と社員とお客様が好きで経営者になった人」と「儲かるから経営者になった人」とに峻別される。後者は消え去り、前者は残る。しかし、これだけではまだまだ不十分だ。同様のことを社員に覚悟させ、納得させないといけない。とはいっても、人は霞(かすみ)を食っては生きてはいけないので、そこを「やりくり」して何らかの生活の糧をできるだけ準備させないといけない。ここで「耐え忍ぶ」という力がつくことになる。
 それでも好転しない場合、いよいよ減額の実行と支給日の変更、またそれをベースにした周辺部分への協力の呼びかけをする。給与の減額で言えば当社では最大75%まで控除したことがある。つまり25%しか支給されない計算になるが、解雇よりはよっぽどいい。企業にとって解雇とは絶縁を意味する。たかだか業績の悪化程度で絶縁したのでは、その経営者は最初から会社を始める資格はない。
 支給日については、一斉支給を2段階、3段階支給に改めていく。もちろん、職階と給与の高いメンバーは1ヶ月遅れ、2ヶ月遅れ、そして3ヶ月遅れ、といった具合に経理がきつくならないように配慮している。

周辺への呼びかけは最後の手段
 周辺への呼びかけとは、仕入先に対する協力要請を指す。しかし、これは最後に回すべきだろう。なぜなら安易に矛盾を周囲に押し付けて自助努力しない企業があまりにも多いからだ。相手方に協力を要請する場合は、まず己自身が八方手を尽くすことが前提である。自らが血を流す覚悟と実践なしに他人に出血を強要するなど論外というほかはない。

共同体の建設こそを最上位に
 企業とは一つの運命共同体だ。業績悪化などという理由で解雇していたのでは存在意義がないはず。自分の給料が下がったからといって、妻や子と縁を切る夫や親がいるだろうか。下がった給料のもとで一家が共に耐え忍び、次なる飛躍の時まで頑張るしかないではないか。これが「共同体」というものだ。
 1日3食に慣れた人が、1日2食に、そして1食にすることは大変なことに違いない。しかし、たとえ1日1食でも家族の中の誰をも殺さないことが肝要である。だから私は業績悪化を理由に社員を解雇する経営者、すなわち「共同体の建設」を最上位に置かない経営者と、雇用確保のために給与の大幅減額を要求しない組合執行部は、基本的に信用しないことにしている。
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