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はじめに

ライセンスメイト篇

平成11年8月号「サイレントマジョリティ 不況に勝ち抜く経営学講座1」

 血のにじむ苦闘を積み重ねながら我が国の経済は長い不況トンネルから脱しつつあるかに見えるが油断は禁物である。『喉元過ぎれば熱さ忘れる』のたとえだけは今回は御免こうむりたい。そこで本誌面をお借りして乱世を生き抜く経営学講座をシリーズで展開していこうと思う。なお、これはリストラ政策の教則本という意味で読んでいただければ幸いである。

 私は大東亜戦争後、久しく続いた好景気は約50年で終焉したと断言できると思う。何ゆえそれは半世紀も続いたのであろうか。答は簡単である。「軍事的敗北の恥辱を経済的勝利をもって晴らす」この一言に尽きる、そしてその骨格的担い手である復員軍人を中心とする皇軍兵士が約50年間元気だったことによる。

 戦後、海外から続々と復員してきた兵士を中心として再構築された産業シフトは、それこそ馬車馬のように稼働してまたたくまに経済復興と国家再建を成し遂げたのであった。支那との闘いで根本的決着を図れないまま、英・米・蘭という国際列強との間に自衛戦争を正面戦の形で挑まざるをえなかった当時の我が国の若人は矢尽き刀折れ有史以来はじめて国土を敵国に占領され、蹂躙されるという悲哀を味わった。

 しかし、それにもひるまず戦争で失った人数を「産めよ増やせよ」とそれこそ数年で回復するに至った。それは大東亜戦争で逸失した頭数をほぼ同期間で完全に穴埋めして余りあるものにした計算である。驚くべき民族の生命力といっていいだろう。私たち戦後生まれの世代、いわゆる団塊の世代はいわばこうしてこの世に出たのである。

 次は経済だ。「一億一心」で「滅私奉公」する若人たちは戦時下の軍律をそのまま民生移転し、それこそ職場を戦場として闘い抜いてきた。そういう愛国少年も今や全員70代。現場の第1線を退いたのははや昔、今や指導、監督の分野でもほとんど後継者へのバトンタッチは完了している。

 この稿の最後でいっておきたいことは、我が国の戦後の経済復興と国家再建は今まで述べてきたように、その根幹部分は復員軍人を中核とする皇軍兵士の圧倒的パワーに依存するものであった。しかし、寄る年波には、いかに史上最強の兵士といえども勝てるものではない。50年がやっとだ。いや、よく50年も持ちこたえてきたものだと驚嘆する。これほどの民族的パワーを敗戦後、半世紀も発揮した事例を私は他国の歴史では知る由もない。私たちが「不況だ、不況だ」と騒ぐ前に、我が国の先輩・先達の辿った道から冷静に学び、もっと積極的に門を叩き、その教えを謙虚に受けとめるべきではないだろうか。「欲しがりません、勝つまでは」のスローガンの通り、私たちの先輩は一生つつましやかに暮らしてきたのだ。私がその先輩諸氏の目線で奮闘してきた実践体験を披露することにしたい。以下の要務令がいささかでも読者諸氏の企業経営に役立たせていただければ筆者の無上の喜びとするところである。