全員社長 「労働者意識・組合員意識」が会社を滅ぼす
ライセンスメイト篇
平成11年11月号「サイレントマジョリティ 不況に勝ち抜く経営学講座4 教程その3」
企業経営と民主主義は両立せず
通常、どんな組織体にも1人だけは「全責任を負うべき人間」がいる。この原理は1人の事業でも十万人のコンツェルンでもいささかも変わらない。要するに最終決定する者が、最終責任を負うべきであるし、それは限りなく1人に集中するようになっている。健全な企業とはそんなものである。民主主義の本家を自認するイギリス、そのイギリスから来日しているビル・トッテン氏日く「企業経営と民主主義ほど両立しないものはない」と。
責任者は1人で十分だ
企業経営とはいわば独裁である。民主主義で走っているような企業は決して世間が認知しない。世間とは誰が責任をとるのか、に絶えず関心をもつし、それがたった1人であることを期待する。考えても見よ、ひとつの船に船長が2人もいたらどうなると思う。はたまた毎日、合議制で進路を決めていたらその船は全ての依頼主から注文をキャンセルされてしまうだろう。約束とは一対一であるし、それの継承である。
頭がいいだけではダメ
今日の銀行業界にとって不幸なことは、すべてではないとしても今まで述べてきた最後の一人がいなかったことである。形式上はトップの座にはいながらも、内実は骨の髄まで使用人根性だったことである。いかに許認可事業とはいえ、民間企業であることに変わりはない。自助・自立・自存・自衛の精神で武装されていない人を、また、そのような気概のない人をトップに戴いてしまったことである。どの道、晩節を逮捕され拘置されるという形で締めくくらざるを得なかったのであれば、何故、逮捕覚悟で土曜を開けなかったのだろうか。お縄覚悟で年中無休にして決戦を挑まなかったのだろうか。頭はいいが度侠がない、優秀ではあるが決断力がない、キレ者といわれるが喧嘩ができない。こういうタイプがトップに居座っていないだろうか。日曜日や祝日の雑踏の中にありながら、銀行だけがシャッターを閉めている。一等地に位置を占めながら、利用者のために開けている対面時間は年に1500時間を切って1450時間に迫るという。ローソンやセブンイレブンの時間計算でいえばたかだか60日か61日でしかない。1年のうち2ケ月間だけ公開して、10ケ月間も顧客をシャットアウトしていたのでは世間から捨てられるのがオチだ。どんなにマシーンで代用しています、といっても納得はしないだろう。
覚悟の共有こそが活路を拓く
しかし、今日の時代は判断力と決断力に富むキレ者の社長が1人いてもそれで事足り るほど甘くはない。それではどうしたらいいか。社員全員に「全員社長になれ、全員経営者になれ、全員トップになれ、全員オーナーになれ」と檄をとばすべきなのだ。また、社員は社員で全員その檄を真摯に受けとめ、自己を改造すべきなのだ。そうとでも覚悟しない限り、企業の延命は極めて困難なものになってくるだろう。社長になることが大変なのではない。社長になろうと「覚悟する」ことが大変なのだ。覚悟の共有こそが部隊をして鬼神もたじろぐほどの勇猛を発揮せしめるのである。
社長と一心(ひとつこころ)になろう
私たちの先輩は、上官の命をただちに天皇陛下の命と仰ぎ、それこそ若い生命を国家のために奉げ尽くしたのである。企業経営とて同じことである。社員全員に社長になれ、ということは「社長と一心になれ」、そして「全力を社業の発展に尽くせ」といっているのである。皇軍兵士は全て天皇陛下に帰依していたといっても過言ではない。その時、はじめて絶対服従という他律的動機が絶対心服という自律的動機に変わるのである。まことに先輩諸氏から学ぶこと大なるものである。