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率先垂範

ライセンスメイト篇

平成16年4月号「人と意見」

信とは己が言を踐み行い 義とは己が分を盡くすをいうなり

拝啓 熊本県知事 潮谷義子殿

知事に申し上げます。

 いま問題となっております黒川温泉の「アイレディース宮殿黒川温泉」を廃業に追い込んだ事は返す返す残念至極の極みと申し上げなければなりません。

知事曰く

 「本県としては、ハンセン病に関する資料をお送りし、ハンセン病に対する理解を求めるとともに、宿泊を予定している方達は、治癒されており、毎年の健康診断時の菌検査でも菌の発見はないこと等を申し上げてきたところです。その上で、再三にわたり宿泊の受入れを求めてきたところでありますが、当初の方針は撤回されませんでした。」

黒川温泉の思いは

知事に申し上げます。

 私は久住高原、黒川温泉にはたびたび訪れ、日本でも尤も雄大な高原を訪れる度に満喫しております。この温泉は何度訪れても飽きることのない日本でも気に入った土地の一つです。

 また、ひなびた温泉の黒川温泉にも旅館を初め、この地区のペンションなどにも何度となく訪れては宿泊もしてきました。そしてこの「アレディース宮殿黒川温泉」なるホテルが存在することも知っておりますが、ただ前を通り過ぎるだけで、殆んど興味をしめすことはありませんでした。

 しかし、この「アレディース宮殿黒川温泉」がハンセン病患者の宿泊を断ったことから改めて認識を新たにしたのです。事もあろうにこれが元でこのホテルが廃業に追い込まれてしまいました。これには大きな驚きを感じ、人権に名を借りた偽善に大きな恐怖を覚えます。

誤った水戸黄門の葵の印籠

 テレビニュースでは廃業に追い込まれたホテルは、県側から予約後、それまで宿泊客がハンセン病患者ということには触れなかったというのです。であれば前段に述べておられる知事の「予約当時、何度もハンセン病患者の宿泊であることを説明して、それでも宿泊を断られた」とはホテル側が主張することとは全く反対のことではありませんか。もし、これが事実であればハンセン病患者であることは伏せておきたかった。それを直前になってそのことを通知して断られた。これをもって「人権侵害」とわめき立て、マスコミを使って水戸黄門の葵の印籠を振りかざした。これでは暴力団の言いがかりというしかありません。

罠にかけた人権派熊本県

 県側は、おとり捜査と同じように罠にはめて、金ずるに言いがかりをつける様な手段をとる暴力団と何ら変わりないと思われても仕方がない、異常な県だと呆れるばかりです。なぜ最初から予約の段階でハンセン病患者の宿泊であり、感染はありえないことを充分に説明しなかったのでしょうか。

 また、例え知事が前段の説明のように意を尽くして説明したとしても、ホテル側が宿泊を断るのは経営上自由のはずです。

 黒川温泉には沢山の温泉宿があります。もし、他の温泉宿に声がかりがなかったから幸いだと思いますが、これが、他の旅館にも「アイレディース宮殿黒川温泉」と同じように声がかかったとしたら、同じ答えが返ってきたと思われます。今回は他の旅館にはこれがなかった。恐らく我が身にそれがなかったことに安堵の胸をなでおろしているに違いありません。なんでしたら、代わりに今からでも他の旅館に声をかけてみたらどうでしょう。宿泊を受け入れてくれる旅館がありますか。もし受け入れてくれる旅館があるとすれば、宿泊を利用する私たちでもこの旅館は避けることになるでしょう。であれば、そこで働く従業員やこれに関わる仕入れ業者などは生活に関わる問題です。これらの保証は誰が償うのでしょうか。熊本県ですか。この辺のことが県には或いは社会的に保護されている恵楓園にはお解りでしょうか。民間人ではない経営の厳しさをご存じない役人には、我が身に痛みを感じないおごりというしかありません。

知事日く

 「今なお残るいわれのない偏見や差別の解消のため、本県としてはハンセン病問題をはじめ様々な人権問題の啓発に取り組んでいるところですが、そのような中、今回の貴ホテルの対応は、偏見と差別に基づいたものとしか考えられません。このような正当な理由のない宿泊の拒否は、人権侵害として極めて遺憾であります」。

知事に申し上げます。

 「‥‥‥このような正当な理由のない宿泊の拒否‥‥‥」と申されますが、私が代わりに申し上げましょう。「他のお客様に迷惑で、宿泊拒否による営業損失は大だから」です。これが「正当な理由」です。

 この揚げ足を取って「人権侵害なる」問題を世に問うて偽善の顔をする熊本県とはどのような人種が住んでいるのでしょうか。私は改めて事の重大さに驚きを感じると同時に強い怒りを覚えてなりません。

 まさに平和団体、人権団体と同じ偽善の団体ではありませんか。「この葵の印寵が目に入らぬか」の錦の御旗ではありませんか。これさえ掲げれば、ひれ伏してすべてが思い通りになるという県側の主張の独善的思い上がりは、絶対に許すわけには参りません。

 今回、ホテル側が宿泊を断らねばならないこの苦悩に思い至って考えたことがありますか。例え菊池恵楓園、熊本県がハンセン病の感染がないと強弁してみても、まだ、世間一般ではこの認識には無知といっていいほど理解者は少ないのです。例え、ホテルが安全と知りつつ人権上それを呑み、宿泊に応じた場合、それが元での損失を考えたことがありますか。宿泊客は敬遠し、予約客はキャンセルが相次ぎ、善を行うつもりが他のお客様には懐疑心を抱かせる結果になるに違いありません。つまり悪を作ることになります。物事には二律相反するものが全て付きまとうのは自然の現象です。

 熊本県知事が先ず以て、自ら患者と同じお風呂に入って同じお茶を飲み交わし、肌を触れあって安全であることを証明すべきです。そして県庁職員にもそれを強制し受け入れてから、今回の「アイレディース宮殿黒川温泉宿泊拒否」の問題を改めて問うべきではないでしょうか。

人に内在する善悪の心

 己ができないことを他に求めてはなりません。それでは知事が言う「人権」とは「偽善」が透けて見えてくるではありませんか。

 人の胸中には善悪二つが同居しております。人はあるときには神のようになり、あるときには悪魔のようにもなります。人間から悪を無くすには人間が神や仏になるしかないのです。それほど人権を尊び、差別を無くすことはつきることのない人間の永遠のテーマでもあります。

 人間の深層心理には少なからず差別心が存在します。これを無くすことはできませんが、努力によって少なくとも減少させることはできないわけではありませんが、しかしどうしても払拭できない差別心は人間が持っている性(さが)でもあります。これを無くすことは神や仏になることを意味します。知事にそれができますか。大きな疑問です。

 人権派が「差別」を無くせと言われるほど偽善なものはないと信じております。「差別をなくせ」と言う人ほど「差別心があるのです」。だからこそ自分に言い聞かせていることではないでしょうか。

 差別のない人はもともとその思いはありませんが、今更人権だとか「差別」を言われると改めて差別心が起きてくるものです。これが人間ではないでしょうか。

「アイレディース宮殿黒川温泉」を廃業に追い込んだ「熊本県・菊地恵楓園」の逆差別

 今回の「アイレディース宮殿黒川温泉」の問題。これを機会にハンセン病患者への理解を求めなければなりませんが、問題は全国民大多数に偏見が無く、理解者が多ければこのような問題は起きなかったでしょう。まだまだ遠い道のりになりますが、いまの「アイレディース宮殿黒川温泉」を廃業へ追い込んだのは逆に「熊本県・菊地恵楓園」の逆差別としか言いようがありません。これにはファシズム的逆差別を強く感じるのです。さらにこれは言論暴力でもあります。

 そういう私は決して差別を助長するものではありません。差別は少しでも無くさねばならないことは申すまでもありません。しかしこの間題の解決は、非常に困難で気の遠くなる時間を要するでしょう。これは一刀両断に切り捨てて解決できる問題ではありません。この間題は何度も言いますように尽きることのない人類永遠のテーマでもあります。患者の方にはお気の毒ですが、気の遠くなるほど時間をかけてやるしかありません。

 傲慢と言うしかない熊本県、恵楓園がホテル側に謝罪することを強く求めて止みません。このような思いを抱いている人は私以外にもまだまだたくさんおられると思われます。それが声にならないだけです。声なき声を汲み取ってこそ、理解者も多くなるでしょう。如何でしょうか。ホテルを廃業に追い込んだ謝罪を強く求めます。敬具

平成16年2月21日

福岡県知事認可 専修学校 日本不動産専門学校

理事長 小菅亥三郎