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長期入院は人作り その2

博多独楽篇

平成12年11月号「私的経営のこころ 中小企業の生き延びる道(11)」

 前号より会社経営の基幹部員である社員の長期入院に対する当学院の対処方法を実例をあげて説明してきた。まず新たな担当者をたてる件については、前任者の業務を細分化し、既存の人員へ割り振って行く分散方式を採り入れていると述べた。ここまでは読者の皆さんにもよくお判りいただけたと思う。その上で「長期入院は人作り」となり得る重要なポイントとなるのが、第三の問題である入院当事者に対する見舞や連絡業務等にあると私は考えている。

 この間題については、当学院の場合、当初は社員全員で実行するが、入院が長期に亘ると判断した段階から別シフトに切り替えている。つまり週1回、固定曜日、画定時間に固定の担当者に入院当事者への見舞いや連絡業務等を一括して司どらせることにしている。いわゆるお見舞い定期便」の稼働開始だ。通例、木曜日の午後をあてがっている。だから入院当事者は、毎週木曜日の午後は会社からの「定期便」を「心待ち」にできることになる。定期便担当者は上司や部下や同僚の、そして顧客の気持ちをのせて病院に行く。また入院当事者の気持ちをすべて会社にもち帰ってくる。そして毎週その状況を掲示することで、社員全員に告知し、本人の家族には定期的に連絡をとる。回復状況次第では、病室に仕事も持ち込んでいる。

 これらはともすれば単なる定期業務のように思えがちだが、これこそが仲間やお客様は本人の回復を心待ちにしているという印象つけであり、退院後の職場復帰への適応力の早期養成であり、業務そのものでもあるのだ。

 事実、不治の病といわれる白血病で入院した女子職員も職場復帰まで18カ月と時間はかかったものの、見事職場復帰を果たし、現在、元気に業務についている。このことだけでも「見舞い定期便」の担う役割がいかに大きいかということがお判りいただけるのではないだろうか。

 最後は職場への復帰の問題であるが、今までの説明からお判りいただけると思うが円滑そのものである。気心と顔が知れた上に、仕事のできる者が有り難いことに「入社」してくれるのである。企業にとってこんなに嬉しいことはない。もちろん、以前の担当業務にいきなり戻すことはせず、徐々に通常の業務環境に慣れさせていく。期間に長短はあるが、短い者で1~3カ月、長い者でも3~5年をかければ何とか慣れていくものだ。中には元の身体に戻らないものもいるが、それは全く問題にしない。なぜなら私が作ろうとしているのは家族であり、共同体である。それに応じた業務を割り出し、当の本人に担当してもらうことにしていくのが私の仕事だからだ。